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人生交響曲

TRPG中心に好き勝手だべる主婦の徒然日記。

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花の国の呪われし者達−ニークライト編・2−

あと2,3話くらい?
思った以上にシリアス風味ですねぇw


「夢を見る方法?」

 ニークライトの言葉に、ハイジとアージェは顔を見合わせる。
 2人とも、今夜の宵闇祭りの為に出かけなければならなかったが、宿泊客の食事の準備に追われている。
 ハイジは外で待っている女の子達が先に行くまでここに居座るつもりらしい。
 薪を中に運び込んだリと手伝ってはいるが、食堂となっている大広間には決して姿を見せようとしない。

「寝るしかないんじゃないのかな」
 
 大鍋の中身を掻き混ぜながらアージェも考えるが、それくらいしか思いつかない。

「そうじゃなくてさ、見たい夢を見る為だよ」

 お皿を洗いながら、ニークライトは口を尖らせる。

「アージェ、ハイジ。ここはもういいから宵闇祭りに行っておいで」

 なかなか出かけようとしない2人の様子に、アージェの父は苦笑交じりに促す。
 魔神の呪いを受けた父は、眠っている間に森の魔女の解呪によって呪いより開放された。
 けれども、足には軽い障害は残ってしまった。
 けれども、料理の腕は変わりない。
 娘が成人するお祝いもあり、今夜は大盤振る舞いという事もあって、宿は大賑わいであった。

「でも・・・」

 弟達が手伝ってはいるが、やはり大変そうであり。
 アージェは気になるのか、なかなか準備しようとしなかった。

「だいじょーぶ、僕も手伝うからアージェは兄ちゃんと行っておいでよ」

 今夜はニークライトも宿に泊めてもらう予定だ。
 
「ごめんね、ニーク君」

 春とはいえ、山の夜は冷え込む。
 仕方ないとアージェとハイジは上着を着込むと、裏口から外に出る。

「いいの?外にいるのにみんな・・・」

「勘弁してくれ・・・」

 そんな2人の会話が聞こえ遠ざかって行った。


「ハイジ兄ちゃん、ほんとにモテるんだな・・・」

「兄ちゃん、顔だけは良いもんなぁ・・・」

 ニークライトとバッツは、頷き合う。

「俺達も、ここが落ち着いたら行くんだからな」

「えー、ほんとに行く気なのか?」

 行く気満々なバッツに対して、ニークライトはどちらかといえば消極的だ。
 宿の仕事が早々終わるとは思えなかったし、また見つかって余計なトラブルになるのは避けたい。
 いつも自分を執拗にいじめる連中は、正直女の子達にも嫌われている。
 不満の捌け口にされそうで嫌だった。

「あったり前だろ、姉ちゃんに何かあったらどうすんだよ」

「とか言ってるけど、何やってるのか見たくてしょうがないんだろ?」

 ニークライトの指摘に、バッツは顔を赤くする。

「べ、別にいいだろ。ハイジ兄ちゃんだってずっと姉ちゃんと一緒ってわけじゃないんだしさぁ。別々に動き出したら姉ちゃんを見張ればいいんだし」

 が、現実はそんなに甘いものではないようであった。
 予想以上の客の入りに多忙を極め、2人とも最後は疲れ切って口を開く余裕もなくなっていたのである。
 何しろ、外は寒いと村の妻帯者である男共もここにきたのだ。
 酔っているのか、大勢の客の手前なのねか、比較的若い男衆はニークライトがいても特に忌避感示さなかった。
 それどころか、気軽に話しかけてくる者もいる。
 この村は外の者の出入りも多いせいか、以前よりは古い慣習の束縛から開放されつつある証拠なのかもしれない。
 村の外もこんな具合なのだろうか。
 少し擽ったい気もした。

 気がつけば、アージェが宿泊客である冒険者の青年と共に戻ってきていた。
 連れの若い女性と一緒の筈であったが、祭りの場で所在なげなアージェとハイジに声を掛け、意気投合して今迄は一緒に居たらしい。
 先に帰って寝るという青年に乗じてアージェもまた帰ってきたのである。

「ハイジ兄ちゃんは?」

「もう少ししたら、帰るって言ってたわよ?」

 一緒に空いた皿を片付けていく。

「兄ちゃんが?珍しいなぁ」

「あの冒険者さんと一緒にいた女の人、帝都出身の人なんだって。ハイジ君、懐かしいんじゃないのかな」

「そっか、兄ちゃん帝都生まれだもんね。あんまりその話はしたがらないけどさ」

 帝都の事は、ハイジは口にしたがらない。
 アージェも、彼から帝都の話を聞いたことがない。
 泣いている姿を見たのも、あれきりだった。
 
 後は明日の仕込みだけだからというアージェの言葉に甘えて、ニークライトは空き部屋というよりも物置きを改造したいつの間にか自分とハイジ専用の寝室になった小部屋に戻る。
 2段ベッドのみであるが、寝るだけなので何の問題もない。
 そのまま上段のベッドの中に潜り込む。
 いつ泊まってもいいようにと、布団はいつも清潔であり寝心地も悪くない。
 ハイジはまだ戻っておらず、下段のベッドも整えられたままであった。

「疲れちゃったな」

 ランプを消して、目を閉じる。
 パズルの事を考える暇もないままに、眠りはあっと言う間に訪れた。


 泣き声だ。
 聞こえてくるのは、2つ。
 動物の泣き声かと思ったのだが、どうやら人の子のようだ。
 更にそのうちのひとつは、自分のものである事に気づく。
 ではもうひとつは?
 よく動かない身体を懸命に動かして、漸く隣を見る事ができた。
 そこにいたのは、赤ん坊であった。
 生まれてすぐなのであろう。
 髪はまばらであり、顔は赤らんでくしゃくしゃだ。
 不意に抱き上げられる。
 自分を胸に抱いて、痛いくらいに抱きしめて、何度も何度も頬ずりをしてくるのは、女性であった。
 薄ぼんやりとしか見えなかったが、彼女は銀色の髪の中でひと房だけ紫色であり、涙を溜めた眼差しもまた紫色。
 ただ、こう言っていた。

「ごめんね、ごめんね」

 何故彼女は謝っているのだろうか。
 何より、何故こんなにも懐かしく思えるのだろう。


 夢の中でニークライトは考えるが、ふわふわと漂うような感覚しかない。
 どうやら、この間の夢の続きをみているというわけではなさそうであった。


 気がつくと、今度は違う場所にいた。
 今度は見覚えがあった。
 だが、以前よりはっきりと周囲が見渡せている。
 洞窟の中だ。
 低いゴツゴツとした岩の天井までよく見えている。
 目の端に見える蝋燭の灯りだけが、唯一の光源であった。
 先程の赤ん坊と女性は、どこにいるのだろう。
 寒さと空腹のせいか、身体は少しも思い通りに動いてはくれない。
 何故、自分はこんな所に1人でいるのだろうか。
 ふっくらとしている小さな拳を口に入れても、空腹は少しもおさまらなかった。

 その時、誰かが音もなく近寄ってきた。
 首を巡らせなくとも、相手の方から近寄ってきて覗き込んでくる。
 金色の眼差し。
 ふさふさの銀色の毛皮。
 人ではない。
 狼だ。
 暫くの間、自分を見つめていた。

 本能的に恐怖を覚える。
 その狼は少なくとも、自分が知っている狼の倍以上の体格であった。
 今の自分では、簡単に噛み殺されてしまうだろう。
 何もできないままに、狼を見上げる事しかできない。
 けれども狼は、鼻先で器用に自分を転がすと、俯せにした。
 何度か匂いを嗅ぐ。
 剥き出しの背中が、鼻息で擽ったかった。
 だが、そう思ったのも束の間、


 狼は、赤ん坊の脇腹にそっと牙を立てた。


 柔肌に喰い込み皮膚を突き破った牙に、赤ん坊は火がついたように泣き出す。
 実際は注意深く、ほんの少しだけ血が出る程度であったが、赤ん坊の泣き声は止まらない。
 ニークライトもまた、夢から覚めようともがくが、身動きがとれなかった。
 狼は何事もなかったかのように、その場から立ち去ってしまう。
 早く夢から覚めたかった。
 もがき泣き続ける赤ん坊は、不意に誰かに抱き上げられる。

 自分を抱き上げた者の顔に、ニークライトみまた驚きを覚える。
 薄汚れてはいたが、それはジョンである事に間違いなかった。


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