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人生交響曲

TRPG中心に好き勝手だべる主婦の徒然日記。

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在りし日-3-

ひとつずつ、やりたい事片付ける(?)しか道はないんでしょうねぇ。
まぁ、少しずつ戻ってきましたね。>気力

色々、がんがる。


 大海原に出て行こう。
 世界中の海に。
 2人で、宝物を探しに行こう。


 時は流れる。
 それは、思いがけない速さであり。
 9歳と6歳の幼い子どもは、いつの間にかそうではなくなっていたけれども。

 朝になれば一緒に起きて。
 昼になれば一緒に遊んで。
 夜になれば一緒に眠る。

 用意されていた筈のレムの部屋は結局そのまま使われる事はないままであり。

 もう寂しいと思う事がない日々。
 それは、穏やかで優しくおひさまのように暖かな日々。

 賑やかな声が、島に響く。
 どこに行くにも、2人は一緒であり。
 しかし、少しずつ状況もまた変わっていた。
 レムが島にやってきて3年たった頃である。


『レム、今日から1人でもう寝なさい。』

 ある日、母から突然こう告げられた。

「どうして?!」

 今朝起きると、キアディはすでに起きているのか、傍にいなかった。
 今迄そういった事はなく、いつも兄のように慕っていた少年に起こされて一緒に朝食を食べていた筈なのだが。

『どうしてって・・・』

 珍しく、困ったような顔をしてみせる母。

「いいもん、キアに後で聞いてみるから。」

 その言葉にますます困ったような顔をしてみせる母の様子に首を傾げるしかなく。
 少し前から、レムは母から真語魔法の師事を受けるようになっていた。
 素養もあったが、何よりも・・・。
 そうしたいと強く望んだからだ。


 いつか世界中を旅して回りたい。


 そう言って笑ってみせた少年の横顔。
 勉強は難しかったが、それを思い出せば苦ではなくなった。

「遊びに行って来る!」

 昼食が済むとほぼ同時に家を飛び出す。
 キアディはおそらく海岸にいる筈だ。
 神殿での見習い業務と訓練をこなした後、彼はいつも海辺にいた。
 そこで待っていてくれているのだ。

 息を弾ませながら海に走っていく少女は、いつもどおり見つける。
 黒い髪の少年を。
 成長期に入った少年は、ここ最近急激に背が伸びてきており。
 そのペースに体重がついていかないのか、随分と細く見える。
 明るい性格は変わっておらずとも、時折随分と大人びた笑みを浮かべる事もあった。

 そして、顔合わすなり母に言われた事を訴える。
 レムの話を最後まで聞きながらも、キアディは少し困ったような顔になる。

「というわけなの。なんで、駄目なんだろ?」

『それは・・・』

 言い澱まれて、レムは押し黙る。
 腕が伸び、レムの髪がくしゃりとかきまわされる。

『あのベッド、もう小さいだろ?2人だと・・・その・・・レムを蹴り出しそうなんだよ』

「そんな事ないもん。私は全然平気よ?」

『レム・・・レムはもう9歳だろ?小さい子じゃないんだからいつまでも一緒に寝てたら、みんなに笑われるぞ?』

 笑ってくしゃくしゃと髪を撫で回される。
 確かにその通りだ。
 いつまでも小さいままじゃない。
 我侭を言って、彼を困らせたくはなかった。
 けれども。。。

 どうして、突然こんな事を言いだしたのだろう。


 少年の表情から困ったような笑みが消える。
 いつもと同じ、少し穏やかな明るい笑みに変わる様子に、胸の奥のもやもやが消えていく。
 けれども、いつものように海で遊んでいても・・・。
 彼は前のように彼女に触れる事がなくなっていた。



 世界中の宝を2人で見つけよう。
 誰も見た事のない場所を見つけよう。



 2人の出会いから4年。
 別れの時が近づいてきていた。
 秘宝の調査も終わりに近づいたのだ。
 毎晩のように部屋から聞こえるレムの泣き声。
 帰りたくないと泣きじゃくる娘を、静かに諭すレムの両親の声。

 扉越しに聞こえる声に、泣きそうになった。
 だが、泣いてはいけないと自分に言い聞かせる。
 男は簡単に泣いたりしない。
 どうすればいいのだろうか。
 考えても浮かばない。

 
 自分に何ができるのだろうか。


 何も思いつかないままに、月日だけはどんどん過ぎ去っていく。
 毎日のように浅い海で何かを探す日々。
 見つからない答えに焦りが出る。
 そして、その日が来た。



「寂しくなるわね」

『また来るから』

「レムちゃんも元気でね?」

 俯いたままであるレムの髪を、慰めの島の最高司祭であるリューンヌが優しく撫でる。
 夫もまた、レムの両親と名残を惜しむ。
 けれども、彼等の傍らにはキアディの姿はなく。
 沖に停泊している船に向かう小舟が、島を離れる。



「しまった!」

 何度も何度も海に潜って何かを探す少年は、小舟が離れていっている事に漸く気付く。
 その手には、大きな2枚貝。
 以前、父から聞いた事があった。
 時折、海の雫を内包している事があると。

 だから、必死に探していた。
 それらしい貝をとにかく見つけて、そっとこじ開けては探す日々。
 手は傷だらけになっても諦めるわけにはいかなかった。

「お願いだから・・・」

 少年の必死な願いを、神は聞きてくれたかどうかはわからない。
 けれども。

「痛っ!!!」

 透明な海に滴り落ちる赤い雫。
 だが、構わず少年は貝の中に指を入れれば目的の物を引っ張りだす。
 そのまま少年は、海を泳ぐ。
 死に物狂いで泳ぎ目指すのは、ルアーブル行きの帆船であった。




「・・・。」

 久しぶりの大きな舟であった。
 4年前は、ワクワクしながら乗った筈なのに。
 今はまるでその逆であった。
 結局、少年は一度も姿を見せてはくれなかった。

「・・・・・ぅ」

 ずっと堪えていた涙が、また零れそうになる。
 その時であった。



『おーい!おーーーーーい!!』

 波の音に紛れるように聞こえてきたのは、知っている声。
 慌てて周囲を見渡すも、いるのは大人ばかりであり。
 誰も、その声に気づいていない。
 レムもまた、気のせいだろうかともう一度周囲を見回した時、

『レム!レム!!』

 確かに名前を呼ばれた。
 そして、島から離れようと準備をする帆船に泳いで近づこうとするのは・・・。

「キア!!」


 小さな姿が、海に飛び込んだ。



 子供が海に落ちたと大騒ぎになっている声も聞こえない。
 泳いでくる姿に、必死に泳ぎ続ける。
 だが、島周辺とは違ってこの辺りの海は流石に荒く。
 小さな体が波に押し流され、飲み込まれんとした時、不意に掴まれた。

『何やってんだよ、レム!』

「   キア?」

 レムの体を抱きかかえているのは、キアディだった。

『海に飛び込むとか、危ないだろ!』

「キアだって、外の海に出ちゃ駄目っておじさんに言われてたじゃない!」

『・・・。』

 正論すぎて、言い返せない。
 けれども、

『ほら、これやる』

 ポケットから苦労して取り出したそれを、レムの小さな手に握らせる。

「キア、怪我してる!」

『もう血は止まったから大丈夫だよ』

 いいから、見てみなよと促されて手を開けば。
 掌の中で転がるのは、生まれたばかりの真珠であった。

 
「これ・・・」

『レムにやる』

 ただ、その一言だけ。
 何かを言いたかった。
 けれども、言葉が出ない。
 帆船から漸くボートが降ろされるのを見ながら、キアディはレムを促す。

『ほら、行くんだ』

「うん・・・」

 泣くのを堪えて無理に笑顔を見せる姿に、少年もまた心に決めた。

『大人になったら迎えに行くよ。必ず迎えに行く。だから・・・』

 もう、泣かないで。
 声に出さないままに、呟いて。
 そして・・・。


 7年後__。

 ぽっかりと開いた神聖な場所に、収められている筈の数々の宝は今はそこにはなかった。
 4年前のあの日、リューンヌの留守を狙って行われた海賊の襲撃。
 奪われたのは、ティガ=タルナの秘宝。
 そして、多くの命。
 その中には、キアディの父も含まれていた。

「やっぱり、行くのね」

 声に、振り返る。

『あぁ』

 短く、ただそれだけ返ってきた言葉。
 夫が命をかけて護り抜いた息子。
 そしてその命と引換に得たのは漆黒の狼の姿をした天使と深い傷。
 黒い服を身に纏ったその姿からは、少年時代の面影を見出すことは少し難しく。

「ほら、そんな顔しない」

 前に回れば、俯き加減である息子の頬を母はそっと包み込みながら見上げる。

「あの人が死んだ事は今でも悲しいわ。でも、あんたは生きてる。それに秘宝が奪われたのは、あんたのせいじゃない」

『そんな事は・・・』

 百も承知だ。

「行くっていうのなら、もう止めないけどね。ついでにしっかり修行してきなさい。どこに所属するかとかもう決めた?」

『浮雲の碇亭』

 少年__いや、すでに青年となった彼は、冒険者になり失われた秘宝を取り戻す事に決めた。


 大海原に出て行こう。
 世界中の海に。
 2人で、宝物を探しに行こう。


 脳裏に蘇る言葉。
 大事な約束。
 守れそうにない事実に、微かに胸が痛む。
 彼女は、どうしているのだろうか。


 一人神殿を出たリューンヌはというと。
 今も変わらぬ海を見る為に、丘を登る。
 沖に停泊してるのは、美しい帆船。
 明日の朝、一人息子であるキアディは旅立つ。

 4年前、船から見えた黒い煙。
 嫌な予感は的中した。
 血で染まった島。
 小さな家々は略奪され、燃やされた。
 わずかに生き残った人々は、神殿の小さな部屋に隠れて助かった。
 けれども、その中には夫と息子の姿はなく。
 神殿地下再奥の空となった宝物庫の中で倒れていた。
 守るように息絶えていた夫。
 漆黒の狼が佇む側では、かろうじて生きていた息子。

 ぽっかりと開いた心はまだ埋めきれてはおらず。
 けれども。

「あの子、今日旅立つの。
 だから、守ってあげてね。
 あなた__」

 一筋の涙が零れ落ちた。




「やっぱり、行くんだ?」

 少し心配そうな母の声に、娘は静かに微笑む。

『うん、行くね』

「わかってる。お父さんの事なら気にしなくていいわ。とにかく自分で決めた事なら、しっかりやんなさい」

『うん、ありがとう』

 4年前のあの日に届いた一通の手紙。
 内容を見るなり、母は泣き出し父もまた悔しげに唇をかみしめていた。

 慰めの島での海賊の襲撃。 
 神殿長の夫の死。
 失われた数々の秘宝。

 それからも続く定期的な手紙のやりとり。
 大人になると同時に旅立とうとするも、反対された。
 
 今はまだ、その時ではない。

 その言葉だけであったが、何があっても両親は娘が旅立つ事は許さなかった。
 学ぶべき事を学び、来るべき日に備えよと。
 焦る日々の中、漸く許されたのがつい先日。
 届いた手紙によると、傷も癒えた彼もまた旅だったという。
 だから決めた。
 自分も後を追うと。
 彼を助ける為に。


 大海原に出て行こう。
 世界中の海に。
 2人で、宝物を探しに行こう。


 少し違ってしまったけれども。
 大人になった彼は、ぶっきらぼうになったらしい。
 今の自分は受け入れてもらえるのだろうか。
 僅かな不安。
 けれども__。


『行こう、ルース』


 付き従うのは、一匹の山猫。
 忍ばせた小袋の中には、一粒の真珠。


 そんな2人が再会するのは、もう少し先の事。
 お互いに本質は何も変わっていないと知るのは、更にもう少し先の事。


 大海原に出て行こう。
 世界中の海に。
 2人で、宝物を探しに行こう。


 広い海が、待っているのだから__。

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