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人生交響曲

TRPG中心に好き勝手だべる主婦の徒然日記。

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花の国の呪われし者達 -旅立ち編・2-

書いているうちに、色々な方のアイデアも頂いて、進化しています(笑)

最終章第2話ですよ。


「まだ、こっちに帰ってない?!」

 ニークライトの素っ頓狂な声に、アージェは目を丸くする。

「うん。ジルと一緒じゃないの?」

「兄ちゃん、ジルと付き合ってないって。今日も誘いを断ったみたいだよ」

「そうなの?」

 昼間村の広場でジルと顔を合わせた時、睨まれた上にすれ違いざまに嫌味を密かに言われた事を思い出す。
 ハイジが他の女性の誘いを断わるのは、いつもの事ではあったが。

「って、今はジルの事なんかどうでもいいんだ。兄ちゃん、どこに行っちゃったんだろ」

「確かに道具も置きっぱなしとか、らしくないかも」

 亡くなった祖父の影響なのか几帳面なところがあるハイジは、道具の手入れは怠らないし普段も定位置に物を置いてないと、ニークライトやアージェの弟達もよく叱られている。
 お陰で弟達の部屋もよく片付いてはいた。
 それはともかく、自分の商売道具ともいえる手斧を放り出したまま、何処かに行ってしまうとは思えなかった。

「とりあえず、明日までは待ってよう?」

 山奥で仕事をする時は、樵や狩人たちが避難場所としている小屋で一夜を明かす時もある。
 そこならニークライトも場所を知っているし、万が一道に迷ったとしてもそこに辿り着きさえすればなんとかなる筈だ。
 幸いにも、山の方で蛮族や魔物を見かけた話も今の処は聞いていない。
 明日になれば、元気に帰ってくる。
 そう信じたい。 
 何とも言えない嫌な予感に、二人は山から目が離せずにいた。

 その予感は、的中した。

 翌日になっても、ハイジは戻って来なかったのである。
 村の山羊たちの面倒を見る手伝いもしているアージェの2番目と3番目弟達_、クラウドとスコールが山小屋の山羊達の世話をしに行った時も帰ってきた様子もなく、ニークライトとバッツが山の上の避難小屋に向かう途中でそこに泊まったという他の樵達と出くわしたが、誰もハイジの姿を見ていなかった。
 事態を重く見たアージェの父が村長と長老達に相談する。
 すると長老達から、思いもよらない反応が返ってきた。

「実はのぉ、ハイジの爺さんも昔同じ様に忽然と山で行方不明になったんじゃよ」

「若い頃の爺さんはそれはもう腹立つくらいにモテておったんじゃが今のハイジ以上に堅物でのう。当時も村一番の美人と言われとった早くに亡くなってもうたハイジの婆さんとの結婚が決まっておったんじゃが、ある日消えてもうたんじゃ」

「当時の儂らも若かった事もあって、居なくなった事をほくそ笑んだものじゃったが・・・」

 初めて聞く内容に、まだ40代の村長もだが父に同行していたアージェもまた半ば呆れつつも驚きを隠せずにいた。

「1週間程で自力で戻ってきたんじゃよ、怪我ひとつないままにの」

「何があったのか問い質したんじゃが、頑として答えようとせんかったんじゃ。ハイジの婆さんもそれ以上は聞くことはせんかったんじゃが・・・」

「魔女に拐かされたんじゃないかと噂しあったもんじゃが・・・」

「ハイジも若い頃の爺さんに、本当によく似ておるしのぉ」

 魔女という言葉に、アージェはギクリとする。
 幸いにも誰も彼女の動揺には気付いていないようだ。
 思い返せば僅かひと月前の月のない夜に、最後の解呪代を渡し終わったばかりであり。
 気になるのは、ハイジの祖父が出会ったかもしれない魔女と、自分が知っている魔女が同じなのかどうか。
 だが50年以上は昔の事の筈だ。
 自分の知っている魔女は、エルフではなかったと思う。
 指先がポケットの中に入れてある赤い小さな宝石に触れる。
 そして、思い出す。
 アルならば何か知っているかもしれない。
 夜になったら聞いてみようと心に決める。
 明日にでも山を捜索が行われるから大丈夫だと慰める父と一緒に旅籠に戻りながらも、心は晴れなかった。



 うっすらと瞼を開く。
 鼻孔に届くのは、様々な薬草の香り。
 夢を見ていたような気がする。
 遠い昔の事。
 つい昨日の事。
 そして、思い出す。

「ここは、どこだ?」

 見知らぬ場所に自分がいる事に、ハイジは漸く気がついた。
 

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