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人生交響曲

TRPG中心に好き勝手だべる主婦の徒然日記。

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花の国の呪われし者達 -番外編・雪妖精と子供たち-

 本編終わってません。
 エェ、それが何か。
 アルル11歳、ハイジ10歳、アージェ8歳、ニークライト7歳の冬のひとコマ?。
 良い子は真似しちゃいけません(・w・)

 冬のギフトに、どーz



 
 
 花の国と言われていても、この界隈では雪は珍しいものではない。
 時には大雪に見舞われる事もあり、そうなると村は出るに出れずに苦労もするが、こうなればのんびりとするしかない。
 山小屋に住む爺さんは長年の経験からか、数日前から孫のハイジと共に村はずれの小さな別宅に避難しており、山に入れるようになるまでここで暮らす事となった。
 週に何日か長老の許で勉強を教わっている少年には、冬の山道をいつもの倍近くかけて行き来しないですむのはありがたく、何かが起きそうな予感にわくわくするのであった。


 その日はどういう訳か早くに目が覚めた。
 今日は仕事も勉強も休みなので、好きに過ごしてよいと昨夜祖父から言われていたハイジは、いつも以上に静まり返っている室内を不思議に思いまがら何故か重く感じられる窓を苦労しながらも開けてみた。

「わ・・・」

 昨日から降り続いた雪の影響で外が一面の銀世界である光景を目にした途端、胸の奥がムズムズするような高揚感を抑えきれなくなってくる。
 跳ね起きてベッドから飛び出すと、大急ぎで着替える。
 散らかしたままを好まない性格であったが、もどかしそうに寝具を整えて夜着もたたみ終えると、あてがわれた部屋を飛び出す。

「おはよう、じいちゃん!」
「おはよう、今朝は随分早いな」
「雪がたくさん積もってるね」
「あぁ、これでは領主様も今日は帰れんな」
「領主様?」
 
 コップに温かなミルクを注ぎ、チーズとパンを自分で用意しながら祖父の話に耳を傾ける。

「そうだ。少し前から視察も兼ねて家族で村に来ていたからな。今日お帰りになるとは言っておったが、この雪では難しいだろうな」
「ふーん?」

 それぞれの国の名前やこの地方の事は知っていても、子供であるハイジにはいまいち理解しかねるのだろうか、気のない返事を返せばチーズを乗せたパンにかぶりつく。
 今は僅かに蕩けて熱々のチーズをいかに落とさずに食べることの方が重要だ。
 旅籠の女将さんが作ってくれるサンドイッチも好きだが、祖父が作るこの山羊のチーズも好きだった。

「ごちそうさま!」

 食べ終わるのとほぼ同時に皿を片付けてしまえば、コートに帽子にマフラーと手袋を身に着けた少年はというとブーツに足を突っ込んで外に出ようとする。

「どこへ行くんだ?」
「アージェとニークんとこ!」
「あぁ、ならついでにこれを届けてくれ」
「わかった、いつものだね。いってきます!」

 祖父から乾燥させた薬草入りの小さな紙袋を受け取ると、ハイジは元気良く外へと飛び出していく。
 旅籠に向かって歩いていると、薄暗かった空は少し晴れようとしていた。
 今日はこれ以上雪は降らないかもしれない。
 思いっきり遊ぼうと思いながら空を見上げた時である。

「あれ?」

 何かが青い空を横切り、銀色の光が村外れに落ちていった。



 つまらない。

 その日、アルル・ティティア・ユースティスは1人で過ごさねばならなかった。
 領地の視察に赴く父と跡取りである兄に連れられて、自分と妹もまた山の中の村にある別荘に滞在していたのであるが、突然の大雪に思わぬ足止めをくらってしまったのである。
 そこにきて兄と妹は風邪で熱を出して寝込んでしまい、父もまたあまり具合が良くないらしく、身の回りの世話をしてくれるメイドや執事に村の女達もその対応に追われていた。
 朝早くに目覚めると、既に朝食の準備もできており、1人でそれを食べる。
 1人きりの食事はなんだか味気なく、スプーンを片手に窓から外を見ても一面の銀世界も薄曇りの中では、寒々しく見えた。
 食事もそこそこに1人で廊下にいれば聞こえてくるのは、父と兄の咳をする気配と熱でぐずり出した妹を優しく宥める村の女の声のみ。
 ここにある読める書物などとうに読み尽くしており、村の子どもと遊ぶ年齢でもないしその気もない。
 外は初めて見る美しい一面の銀世界であったけど。
 雪で遊ぶなんて事は、小さな子供のする事だ。
 だから今日は室内で大人しく本でも読んで過ごそう。
 そんな事を考えながら、窓から離れようとした時であった。

「え?」

 何かが晴れた空を横切ると、銀色の光が村外れに落ちていくのが見えた。
 誰かに話さなければと思うよりも早く、アルルは部屋に駆け込みあつらえてもらったばかりの暖かなコートを着込みお揃いのマフラーと手袋と帽子を両手に抱え、そのまま玄関まで走っていく。

「アルルお嬢様、どうなされたのですか?」
「外っ!」
「まぁ・・・外はお寒いですのでお気をつけくださいね?」

 やはりまだまだ遊びたい年頃だったのかとくすくすと微笑ましげに笑う侍女に見送られ、アルルはという屋敷を飛び出していた。


 今朝の寒さは格別であった。
 おかげで随分と早くに目が覚めてしまってしまい、割り当てられた仕事をこなすのは苦労したが、その後は随分と時間が余ってしまった。
 おまけに今は客の入りも少ない事もあって、朝食を済ませた後は今日は好きに過ごして良い事となった。
 何をしようか考えながら、部屋に戻ったアージェは窓ガラスに雪玉がぶつけられて、思わず飛び上がってしまう。
 外を見れば、真っ白な雪の中で両手を振って合図を送る少年の姿。

「ハイジ君?」

 窓を開けて声を掛けようとすれば、静かにしろというジェスチャーが送られ、慌てて両手で自分の口を塞ぐ。

「いいから、早く来いよ!」

 できるだけ小声でこちらに来るよう促す少年の姿にアージェも頷くと、母が仕立ててくれたポンチョコートを羽織りやはり母が編んでくれた帽子と手袋とマフラーを身に着ければ、まだ眠っている弟達を起こさぬよう足音を忍ばせながら厨房に向かった。

「あら?早いわね」
「おはよう、お母さん。ハイジ君が来てるの。ちょっと行ってくるね」
「気をつけてね、あぁちょっと待って」
「え?すぐに戻ってくるのに?」
「いいから行っておいで。あの子達なら言い聞かせておくから。はい、これ」
「うん、いってきます」

 弟達がいたら、どうしても世話だけで手一杯になってしまう。
 お弁当の包みを持たされ、アージェは裏口から姿を見せると、ハイジが駆け寄ってきた。

「おはよう、ハイジ君。いったいどうしたの?」
「おはよう、村外れに何か落ちたんだ。ニークも連れて見に行こう!」
「危なくないの?」
「平気だって、早く行かなきゃ先越されるしな!」

 雪に足を取られて動きづらいアージェから荷物を取り上げると、ハイジは先頭に立って雪をかき分けながら歩いていく。
 けれどもいつも以上の大雪に何度も足をとられて転びそうになるアージェの様子に、ハイジは不意に立ち止まると手を掴んで引き起こす。

「ご、ごめんね?」
「雪、すごいしな」

 手をつないだまま、2人は道なき道を雪をかきわけ歩いて行く。
 余計歩きにくくはあったが、気温がまた下がりはじめておりお互いにわざと大きく体を動かして歩き続ける。

「どうしよう、なんだかまた降りそうだね」
「ニークの奴、まだ寝てるかなぁ」

 このまま行くか、戻るか。
 どうしようかと迷っていれば、雪でくぐもっていたが何人かの子どもの声が聞こえてきた。

【やめなさいよ、大勢でこんな小さな子を!】
【なんだよ、女のくせに!】
【そうだ、そうだ!】

「あれ?あの声は・・・」
「あいつら、またニークを!アージェ、先に行く!」
「え?喧嘩しないでね?できるならだけど・・・」

 アージェの手を離したハイジには最後まで聞こえていないのか、雪をかきわけ転びそうになりながらも走っていく。
 慌ててそれを追いかけるも、なかなか追いつけない。
 ハイジが怒鳴る声も今日はくぐもってよく聞こえないし、そこにニークライトが止めようとしているらしい?声も入り混じり、知らない声もしている事に気付く。
 しかも女の子だ。
 騒ぎにはなっているが家々からは離れているし、なにより雪と朝早いせいか誰も気づいていないようであり。
  こうなったら自分が止めるとできるだけ急いで何度も雪の上で転びながら、必死に歩き続けた。


 少し前である。

 窓から光る物が村外れに落ちていったのを目撃したニークライトは、ハイジが着られなくなったコートやマフラーに手袋をじたばたしながら身につけると、木のテーブルの上の黒パンを咥えてから家を飛び出した。
 一緒に住んでいるジョンはまだ眠っており、多少の事では彼は何も言わない。
 自分で判断して自分で動けというやつだ。
 もっとも7歳になったばかりの少年には少し難しい事かもしれず、騒ぎを起こしてハイジの祖父や旅籠夫婦の世話になる事もしょっちゅうであった。
 ともあれ何が落ちていったのか見に行く為に、雪をかきわけかきわけ進んだのであるが、途中で朝早くに外で雪遊びをしていた村の子どもたちに出くわしてしまったのである。
 貰い物ではあっても大きさもちょうど良かったし、何よりもお気に入りの帽子の悪口を言われ、珍しくニークライトのほうから向かったのであるが、雪の上に転がされて押さえつけられ多勢に無勢で身包み剥がされそうになった時であった。

「やめなさいよ!」

 凛とした甲高い声。
 いじめっこ達と暴れていたニークライトも動きを止めて振り返る。
 上等そうな防寒具に身を包んだ栗色の髪の少女が、睨みつけていた。

「大勢でこんな小さな子を!」
「なんだよ、女のくせに!」
「そんなの関係ないじゃない!」
「部屋で刺繍とかお人形さんごっこでもしてろよ!」
「そうだ、そうだ!」
「喧嘩はやめようよー?」


 いじめっこ達は、新しいカモが来たとばかりに立ち上がってニークライトから離れて少女を取り囲んだその時であった。

「お前ら、またニークをいじめやがって!」

 そこにいきなり、乱入してきた少年の先制パンチがいじめっこの1人にヒットする。

「ぇ・・・」
「あれ?ハイジ兄ちゃん?」
「やるか!」
「この野郎!」
「ぼくの帽子かえせー!」

 唖然としている少女の前で、ハイジとニークライトはいじめっこ達と殴り合いの喧嘩を繰り広げられる。
 何が何やらの少女は数秒後に我に返って少年たちを止めようとすると、更に自分より小さな赤毛の女の子がいじめっこの腰にしがみついて、止めようとしているではないか。

「け、喧嘩は・・・だ・・・めっ!」
「うるせぇ、アージェは引っ込んでろ!」
「きゃあ!」

 もともと雪まみれであった赤毛の女の子が、いじめっこに突き飛ばされてさらにまた雪にまみれる様子に、少女もついにキレた。

「いいかげんにしなさいよ!」

 少女の繰り出した拳は、見事にいじめっ子の顎にヒットした。



 3対3(?)という事で、いじめっこたちは捨て台詞と共に逃げてしまった。
 脱げてしまった防寒具をニークライトに、アージェが着せてあげており。

「だ、大丈夫?」
「平気・・・」

 ボロボロになったハイジは、雪の中で仰向けになって息を整えている同じくボロボロになった少女を助け起こす。
 少女の新しかったであろうコートはボタンが飛んでおり、帽子もくしゃくしゃになっていた。

「ごめんね、でもニークを助けてくれてありがとう」
「うん、あの子弟なの?」

 何故目を離したんだと言わんばかりの眼差しに、ハイジは自分の帽子を拾い上げて頭に乗せており。

「ちょっと違うけど、弟みたいなものかな。俺、ハイジ。君は・・・どこの子?」

 宿にこんな女の子はいなかった筈であり、アージェもまた不思議そうに少女を見ていた。

「わ、私は・・・ティティ・・・」

 咄嗟にミドルネームの一部を口にする。
 間違ってはいないのだけれども、何故だが嘘をついているような気分にもなってくる。
 けれどもそれを口にすれば、今の雰囲気が壊れてしまうのではないのかと思えてしょうがなく、このままでいいやと思えてきた。

「ほら、ニークライトもちゃんとありがとうって言わなきゃ」
「うん。お姉ちゃん、ありがとう。ぼく、ニークライト」
「ニーク君助けてくれてありがとう。あたしは、アージェっていうの」

 雪の上をひょこひょこと歩いてきた2人にお礼を言われ、アルルも頭を下げ返す。

「余計な事、しちゃったんじゃないのかなって・・・でも、よかった」
「ねぇ、お姉ちゃんはどこからきたの?雪いっぱいなのに、お外から?」

 無邪気なニークライトは、臆することなくアルルの側に近寄り笑いかけてくる。
 今は熱で臥せっている自分の妹を思い出し、思わず笑い返してしまう。

「あの・・・家。お父さ・・・んが、領主様のお世話をしてるから、一緒に来たの」

 そう言って、アルルが指さしたのは領主の別宅だ。
 3人は、歓声をあげてそちらに目をやる。

「ねぇねぇ、領主様ってどんなひと?」
「え?えぇっと・・・」
「こら、ニーク」

 ハイジがニークライトの襟首を掴んで引き離す。

「なにすんだよぉ?」
「困ってるじゃないか、それより行くぞ」
「えー?どこにいくの?」
「村の外れに何か落っこちたんだ。今から見に行くんだ」
「あ、ぼくも見たよ!見に行くとこだったんだぁ」

「あ、それ私も見た!」
「「「えっ?!」」」

 アルルの言葉に、ハイジ達も顔を見合わせる。
 どうやらこれは4人一緒に見に行く事になりそうであった。


 雪の中を、4人の子どもたちが行進するように並んで歩く。
 先頭は、一番体が大きくて雪かきもしながら進むハイジ。
 2番めはすばしっこいニークライトと、彼にせがまれて側にいる事になったアルル。
 最後は、2人が転ばないように気をつけながら同時に誰かがついてこないか見張っている(?)アージェ。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん。お山の外って何があるの?」
「山の下には、町があるの」
「おーと、ってとこ?」
「おーと?王都はもっと遠いとこかな」
「おーとに、双子っている?」
「見た事あるけど?」
「どんな感じ?」
「顔がおんなじだったり、ちょっと違ってるけど似てたりするかなぁ」

 何故ニークライトがそんな事を聞いてくるのかアルルにはわからなかったけれど、ハイジとアージェが少し困ったような顔をしている事に気付く。
 何か事情があるのだろうか。
 無邪気に笑いながらできたばかりの小さな雪道を進む幼い少年は、振り返ってこう告げた。

「双子って、呪われてるの?」
「ぇ・・・」

 あまりの事に、アルルは言葉が出ない。
 なんと言ってよいのかわからずハイジに視線を向ければ、代わりに答えてくれた。

「だから言っただろ、そんなの迷信だって。呪いなんか、ないって前にもいっただろ?」
「だってー」
「ごめんね、ニーク君は双子だから呪われてるって回りの人に言われたりしてるの。お父さんもお母さんもそんな事ないって言ってるし、ニーク君呪われたりなんかしてないから・・・」

 小声でそう告げたアージェに、アルルも頷いてみせる。
 帽子の上から、ニークライトの頭を撫で目を覗きこむ。

「あなたは、呪われてなんかいないわ。だって、みんなと一緒にいるんでしょう?」
「うん、お兄ちゃんもお姉ちゃんも大好き!」
「それで、いいと思う。よかったね」
「うん!ティティお姉ちゃんも好きだよ!」

 しがみついてくるニークライトを支えながら、もし妹の熱が下がったら今度は一緒に連れてこようと思った。
 良家のお嬢様という事で、同じような年頃の子どもと接する機会はあまりなかったし、いても同じような身分の子どもばかりでありこんな風に一緒に過ごす事はなかったように思う。
 思っていた以上の楽しさが、そこにあった。


 だが村外れに近づくにつれ、寒さが徐々に近づいていた。
 空は晴れているというのに周囲には雪のような粒が舞っており、やがて子どもたちの目の端に真っ白な女性が舞う姿が見え始めてくる。

「すごく、寒い・・・」

 一番小さなニークライトがしゃがみこんでしまうのを、アージェが抱きかかえるようにして庇う。
 アルルとハイジもまた、何が起こっているのか理解できない状態ではあったが、只事ではないと漸く理解し始める。

「ハイジ君、あれ・・・」
「え?」

 最初に気がついたのは、アルルであった。
 彼女が指差す方向を、ハイジもまた目を凝らして見つめており。

「光ってる?棒?」
「違う、あれは・・・槍です!」

 白銀に輝く槍が雪の中に突き刺さっており、その周囲を白く透き通った女性たちがまるで護るように待っているのが見える。

「槍?槍がなんであんな所に?!」
「わからないけど・・・あれのせいですごく・・・・っ?!」
「あぶないっ!!」

 空から何かが勢いよく降ってくるのと同時に、アルルはハイジに突き飛ばされて雪に転がっていた。

「ハイジ君!ティティちゃん!」
「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

 ニークライトとアージェの声もまたかき消さて、2人は舞い散った大量の雪の中に埋もれてしまう。
 真っ白になった視界が晴れた時、アルルは気を失ったハイジに庇われるように雪の中に倒れこんでいた事に気付く。
 だが、その視界のすぐ先にいた者の姿に目を奪われる。
 まるで吹雪のような色合いとデザインの鎧を身につけた凛とした年上の美しい少女がそこにいたのだ。
 少女の口から何か発せられるが、何を言っているのかわからない。
 ふと少女は倒れているハイジに目をやり、腕を伸ばす。

「っ!」

 咄嗟に、アルルはハイジを腕の中に抱き込み庇う。
 このままだと、この少年が連れて行かれてしまう。
 なぜかそんな思いに駆られたのだ。
 驚いたように目を見開きそれから笑んでみせた少女に、アルルはこう言っていた。

「彼を連れて行かないで!この子にも大事な人がいるの!」

 何故そう言ったのかわからない。
 けれども、ここは父の領地だ。
 父が守らねばならないのは、自分たちを影から支えてくれる領民。
 父と兄がここにいないのであれば、自分が守らねばならない。
 尋常ではない冷気と恐怖に、体の震えが止まらない。
 それでもこの少年を、渡すわけにはいかなかった。

【・・・。】

 長いような短い時間が流れていく。
 まっすぐにアルルを見下ろしていた少女の獰猛な笑みは、やがて柔らかなものへと変わっていく。
 そのまま踵を返し雪の上を滑るようにあがっていけば白銀の槍に近寄り、それを軽々と引き抜くと一気に空へと舞い上がっていった。
 猛烈な吹雪を、子どもたちが襲う。
 けれどもすぐに止んだ吹雪の後は、見事な青空が広がっていた。



 強烈な吹雪を心配したハイジの祖父と強い妖精の力を感じた妖精使いである冒険者たちが村のすぐ外で見つけたのは、雪の中で体を寄せあって倒れていた4人の子どもであった。
 命の別状はなかったが身体は冷えきり、祖父はそのうちの1人が領主の娘である事にすぐに気づき、アルルを連れて行った。
 ハイジとアージェとニークライトは冒険者達の手で旅籠に運び込まれる。
 目が覚めた3人はというとすぐにお風呂に放り込まれて、湯船につかりながら女将にこっぴどく叱られた。
 完全に温まるまで、出す気はないようであり。

「いいかい、よーく温まってから出てくるんだよ!」
「「「は~い・・・」」」

 そのまま女将は改めて冒険者たちにお礼をする為に出ていったが、すでに顔が真っ赤な3人は出るに出れない。

「ねぇ、ねぇ。おのお姉ちゃん、大丈夫かなぁ・・・」
「ハイジ君のおじいさんが、連れてってくれたけど大丈夫だったって言ってたよ。だよね、ハイジ君?   ハイジ君?」
「もう駄目、俺出る!熱い!」
「あ、お兄ちゃんずるい!」
「あー、2人とも先になんてずるい!」

 賑やかな声と湯気が浴場の窓から聞こえてくる。
 冬はまだまだこれからであったが、そこだけは暖かかった。


 
 8年後__。

 珍しく大雪ではあったが道はすでに雪かきがすんでおり、歩くには少し気をつけなければいけなかったけれども特に支障はなかった。
 裏庭で槍の鍛錬を行なっていたアルルであったが酒場に戻れば温かな飲み物を提供され、カップで手を温めながら通りを眺めていた。

「ねぇ、待ってよ!」
「早く来いよ!」
「早くしないと、雪がなくなっちゃうよ!」
「ぼく、一番!」

 兄弟なのか友達同士なのか。
 4人の子どもたちが、冒険者宿の前を駆け抜けていく。

「懐かしいですね・・・」

 ふと、そんな言葉が口に出る。
 あれからすぐ、兄と妹の熱も下がり雪は解けて道は通れるようになりアルルは家族と共に街へと帰る事ができた。
 彼等とは、あれから会ってはいない。
 元気にしているのだろうか。
 魔神使いの呪いの対象になってはいないだろうか。
 今の彼等を守れるのだろうか。
 いや、守らなければならないのだ。

 それが自分のできる唯一の事だと信じて。


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