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人生交響曲

TRPG中心に好き勝手だべる主婦の徒然日記。

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花の国の呪われし者達 -旅立ち編・6-

本編(?)終わってないのに番外編(?)も無事に完了したので、再開です。
年内に書き上がるといいな(ぇ


 
 何が起こったのか、それは彼の理解の範疇を完全に超えていた。


 その日はニークライトも連れて、山の奥側に向かった。
 山の最奥は魔女の領域だから入らないほうがいいというは、前々から村の樵や猟師の古株から、それこそ子供の頃から何度も聞かされていた。
 死んだ祖父もかつて似たような事を言っていたが、それはあくまでも孫を心配しての言葉だと思っていた。
 だが森の手入れを怠るわけにはいかなかったし、この冬は雪が多く育てていた木がどうなっているのか気になっていた。
 実際は思っていたよりは大した被害もなく、順調に生育していた事に安堵したのではあるが。

 枯れた枝を切り払いながら、山菜を探すニークライトの様子を横目で時折確認する。
 今年で漸く成人する少年がこの先どうやって生計を立てていくのか、兄貴分として一緒に考えないといけなかった。
 とはいえ山の仕事は、少年にあまり向いていない。
 村の長老たちの中には未だに彼を、呪われた者として毛嫌いしているが、徐々に彼を受け入れてくれている者もいる。
 かつてはニークライトをいじめていた村の子供達の中でも心身共に大人となり、侘びを入れた者もいた。
 状況は、少しずつ良い方向に動いている。
 無論、自分の事もこれからどうするのか、よく考えねばならない。
 村を担う者の1人となるにしても、何時までも子供の時のままではいられない。

 どうしたいのかは、本当はわかっていた。

 けれどもなかなか言い出せなかったし、何よりも今は漸く一人前として認められたばかりの若造なのだ。
 この先何をするにしても、金がいるだろう。
 金がないと、色々と苦労するのは知っている。
 今思えば、幼い自分を放り出すように祖父に預けた叔母夫婦は、世間体があったとはいえルキスラの帝都からここまで自分をわざわざ連れてきた。
 冒険者達を雇うには金がいるし、それは決して安い金額ではない事も。
 叔母夫婦は多少なりとも金はあったし自分は酷い扱いこそ受けたが、スラムに捨てられたり売り飛ばされなかっただけでもマシであったのかもしれない。
 だからこそ、必要最低限の分くらいは貯めておきたかった。
 それにジルの事も、正直に言うとなんとも思っていない。
 確かに宵闇祭りで話し掛けられた事もあり少しは話をしたが、思い通りにならないと気が済まない彼女は苦手であったし、あの夜も一緒にいようとするのは、はっきりと拒んだ。
 お陰でいらぬ恨みも買ったようではあるが、自分が一緒に居たいのは・・・。

「しまった。おい、ニーク何処にいる?」

 徒然な思考の海より浮上し我に返ったハイジは、自分が随分と森の奥深くにまで入り込んでしまっていた事に漸く気がつく。
 普段目印にしている物も見当たらず、ほぼ手付かずの山林は鬱蒼としていて、見通しも悪い。
 それ以前に、自分が分け入った足跡すら残っていない事に気がつく。

「ニーク!聞こえるか!」

 返事は返ってこず、どうしたものかと考える。
 いざという時の合流場所も、避難する為の山小屋の場所も教え込んでいる。
 ニークライトも自分がいないとわかれば、一旦山を降りるかそこを目指す筈だ。
 まずは自分が何処にいるのか把握する為にも、少しでも開けた場所目指すことにした時であった。

 ふわりと目の前に、何かがよぎる。
 何事かと瞬きをすれば目を凝らして、それを目で追う。

「妖精?」

 遠い昔、幼い自分に話して聞かせてくれた、母の事を思い出す。
 とうにうろ覚えであった筈の両親の顔も、何故かはっきりと思い出す。
 眠る前、代冒険譚を聞かせてくれた母と父。
 眠りに落ちる直前に見たのは、穏やかな笑み。

 ずっと続くと思っていた。
 突然断ち切られたあの日までは。

 場違いな感情に戸惑いながらも、ハイジは思わずふわりと飛んでいる小さな羽の生えた少女に手を伸ばす。
 妖精もまた怖がる様子もなく青年に近寄れば、笑顔のまま何か粉のような物を顔に向かっていきなり投げつけ・・・
 その直後、彼の意識は闇に落ちた。

 

 まだ山の空気は肌寒く、日が差し込まぬ場所は冬のように空気が冷たい筈であった。
 けれども、ここは随分と温かい。
 夢か現か。
 ぼんやりとしたまま、瞼を開けるのも億劫であり、髪や頬を撫でる滑らかな感触は酷く抗い難かった。
 知っているような、けれどもよく知らない感触であり。
 眠りの淵を漂う彼はここは何処なのかと言い掛け、黙り込む。
 手のひらでを塞がれた事にすら気がつかない。
 ただひとつだけ、思い出す。
 仄かに鼻孔をくすぐるこの香りは、知っていた。
 どこで?いつ?
 けれども、時折嗅いだ事がある。
 微か思い出す。
 月のない夜の翌日の朝だ。
 彼女から時折漂う香りと同じである事に気付く。
 そして意識はまた、闇に落ちていった。


 それからまたどれくらいの時間が過ぎたのか。
 けれどもさほど時間は経ってはいない事だけは、なんとなくではあるが解った。
 ゆっくりと身体を起こす。
 着ていた筈の上着とシャツがない事に気付く。
 どこにいったのかと首を巡らせば、全く覚えがない部屋に寝かされていた。
 けれども身体は痛む箇所もないので、怪我をしている様子もなさそうだ。
 なのに身体は重く、頭の中も靄がかかっているかのようであった。
 座っているのも徐々に億劫になってくる。
 もう少し眠ったほうがいいのだろうか。
 そんな感覚にハイジは再び目を閉じようとして、何者かが部屋に入ってきた気配を感じ取った。
 どうにか視線だけはそちら向ける。
 そこにいたのは_。
 黒い髪と緑の眼差し。
 赤い唇に微かな笑みを浮かべた、妖艶な女がそこにいた。

 魔女だ。

 一度も会ったことの無い女であったが、何故かすぐにわかった。
 歳の頃は20代前半の人間のように見えるが、実際はどうなのかすらわからない。
 母達もまた、魔女と会ったことがあるという。
 もし母達が出会った者と同一人物であるならば、それなりの高齢である筈だ。
 戸惑うハイジをよそに、女は笑みを浮かべて歩み寄る。

「本当にアルフレッドとよく似ているじゃない」
「じいさんを知ってるのか?」

 祖父の名前が出てきた事に面食らうも、動くことができない。
 恐怖なのか魅了なのか。
 それすらも判らないままに、話に耳をかたむける。
 
「そうよ。彼もまだ若かったけれども。名前は?」
「     ハイジ」

 有無を言わせぬ口調に、微かに沸き起こるのは、何なのか。
 身を寄せてきた女から、無意識に離れてしまう。

「何が起こったのかって顔をしてるわね」
「当たり前だ」

 いったい自分に何の用があるのか。
 まるで検討もつかない。
 離れようとするハイジの様子に、女は気を悪くした様子も見せない。

「あんたに興味があったしね。まさかここまで似ているとは思わなかったけど」
「じいさんにか?」

 昔の祖父を知る者達は成長したハイジを見る度にそっくりだと口を揃えて言ったものであるが、彼自身が知っている祖父は既に老人だ。
 そんなに似ているのだろうかと、どうしても感覚的に理解できないでいた。
 何より、それが今どう関係しているのか。

「もう忘れるつもりだったけど、また出会えるなんてね」
「どういう・・・」
「ここで、私と生きていくつもりはないかい?」
「っ!」

 頬を撫でられ、思わず後ずさる。
 見知らぬ女に触れられる云われはなかったし、突然こんな所に連れてこられたという理不尽な怒り。
 あからさまな拒否に、女の表情も変わる。

「どういうつもりだい?」
「俺は、じいさんの代わりじゃない」
「ここで私と暮らせば、不自由なく生きていけるんだよ?」
「あんたと?ここで?勝手な事を言わないでくれ!」

 恐れよりも、怒りが強くなっていく。
 自分を虐待した叔母の事。
 望みもしない関係を押し付けるジル。
 ここにきて、祖父の代わりのように迫る魔女の言葉。
 押し隠していたハイジの怒りが限界を超えた。

「頼むから、ほっといてくれ!!」

 裸足のままであったが、かまわずハイジは部屋を出ようとする。
 だが、一歩も動けない。
 見えない力で縛られ、踏み出す事も指を動かす事もできないでいた。

「そこまでして帰りたい理由はなんなんだい?」
「・・・。」

 黙りこむ。
 話す筋合いはなかったし、何をされるのかすらわからない恐怖が先に立つ。
 魔女は、真正面からハイジの顔を覗き込む。
 美しい緑の眼差しが、ハイジの蒼い目を捉えて離さない。

「アルフレッドには、もう決めた相手がいたけど・・・ふぅん?」

 心を読み取られたかのようで、心臓が脈打つ音が耳の奥で鳴り響く。

「そうかい、あんたは・・・」
「あんたには、関係ない」
「このまま帰してもいいけど、この私の誘いを断ったんだ」

 魔女の指が、動けないハイジの頬を撫でる。

「あぁ、どうせなら。ひとつあんたを困らせるのも一興だねぇ」

 クスクスと笑う声がやけに頭の中で響く。

「頭に花が咲いて、ついでにたくさんフラれるといい」

 言ってる意味が、わからない。
 だが、頭の芯がしびれるような感覚を覚え、まともに立っていることする難しくなってくる。

「呪いを解きたければ、あの子に自分のありのままを伝えるといい。でなければ、どんな神にも邪魔をさせない。でもね、もしうまくいけば、呪いを解く事ができるかもねぇ?」
「どう・・・いう・・・・?」

 最後まで言い終わる前に、意識は完全に閉ざされた。

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